平成17年4月1日以降、少額訴訟により取得された債務名義による金銭債権に対する強制執行は、地方裁判所の他に、前記債務名義が成立した当該簡易裁判所の裁判所書記官が行うことがでるようになりました。従来は、少額訴訟により取得された債務名義であっても、地方裁判所に出向いて行われなければなりませんでした。この執行手続の一部が、当該簡易裁判所においてそのまま執行手続に入れるようになり、更には、簡易裁判所で訴訟代理権のある司法書士は、少額訴訟債権執行手続について代理人となることができるようになりました。

1.対象となる債務名義(第167条の2第1項)
 
 
i. 少額訴訟における確定判決
ii. 仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決
iii. 少額訴訟における訴訟費用又は和解の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分
iv. 少額訴訟における和解又は認諾の調書
v. 少額訴訟における民事訴訟法第275条の2第1項の規定による和解に代わる決定

2.転付命令等は適用外
 
 
ア. 具体的には、転付命令・譲渡命令・売却命令・管理命令・その他相当な方法による換価を命ずる命令のことです。
イ. 上記のような、利害関係人間の利害の調整が複雑で、その内容が重く、時間を要する手続きは、少額訴訟債権執行制度を利用することができません。
ウ. 少額訴訟の債務名義では、上記の転付命令等の執行手続きを利用できないという意味ではなく、管轄が地方裁判所になり、通常の債権執行手続きによるという意味です。

3.配当手続きを必要とするものも適用除外
 
 
ア. 債権執行においては、差押命令の送達を受けた第三債務者は、供託によりその義務を免れることができます(第156条第1項・第2項)。
イ. この場合、債権者が2人以上であって供託金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができないときは、「配当」を実施しなければなりません(第166条第1項)。
ウ. この配当手続きのような、複雑な手続きを要する場合は、少額訴訟債権執行制度を利用することができません。
エ. 執行裁判所は、職権で地方裁判所における債権執行の手続に事件を移行させなければなりません(第167条の11第1項・第2項・第5項)。

4.裁量移行の制度
 
 
ア. 申立の内容等によっては、必ずしも簡易迅速に手続を行うことができるとは限らず、困難な判断や複雑な手続を必要とする事件も一定程度存在するはずです。
イ. そこで、執行裁判所は、差し押えるべき金銭債権の内容その他の事情を考慮して相当と認められるときは、その所在地を管轄する地方裁判所における債権執行の手続に事件を移行させることができます(第167条の12第1項)。
ウ. 具体例としては、下記のような例があります。
 
@. 不明確な請負契約に基づく報酬請求権等、差し押えるべき金銭債権の特定が困難な場合
A. 差し押さえることができる金銭債権に該当するか否かの判断が困難な場合
 
将来債権
(既にその発生の基礎となる法律関係が存在し、近い将来における発生が確実に見込めるため財産価値を有するものに限って差し押えをすることができるとの取扱いになっている)
債務者以外の者の名義の預金債権
(実態的に債務者の預金債権であると認められるものに限って差し押えをすることができるとの取扱いになっている)

5.執行機関
 
 
ア. 少額訴訟債権執行は、請求債権の額が少額である上、金銭債権の差押えと弁済金の交付という簡易な手続に限って行うことができるとされているので、裁判所書記官がその手続を行うものとされています(第167条の2第1項)。
イ. そして、少額訴訟債権執行の申立は、少額訴訟に係る債務名義の作成に係る簡易裁判所の裁判所書記官に対してすることとされています(第167条の2第3項)。

6.司法書士の関与の範囲
 
 
ア. 具体的には、下記のとおりです。
 
@. 少額訴訟債権執行の手続であって、請求価格が140万円を超えないもの(司法書士法第3条第1項第6号ホ)
A. 執行分の付与
イ. 反対に、簡易裁判所において、少額訴訟債権執行に関する「請求異議の訴え等」が行われる場合でも、司法書士が代理人となることはできません(司法書士法第3条第1項第6号但書)。
ウ. 少額訴訟の手続において代理人となった司法書士は、更に委任を受けることなく、少額訴訟債権執行の手続について代理することができます(司法書士法第3条第7項但書)。

7.60万円 ? 140万円 ?
 
 
ア. 少額訴訟の対象となる事件の訴訟の目的の価額の上限は60万円ですが(民事訴訟法第368条第1項)、これを超える額について和解が成立し、債務名義が作成されるとも有り得ます。